真逆だからこそ
得られるリラックスタイム
「この数年あまり出来てないですけれど、一時期はかなりの頻度でプレーしていました」
昨年のW杯でONE-TEAMという言葉を強く印象づけた、チームスポーツの代表格であるラグビーと、プレー自体は個で行うゴルフ。相反するスポーツに、どんな魅力を感じているのだろうか。
「100%リラックスできます。休みの日に自然のなかで過ごすことは、本当に気持ちがいい。しかも、体動かして、食事もできて、お風呂に入って帰れるって最高ですよね。ラグビーにはない。いいリフレッシュになりますよ」
80分間、激しいボディコンタクトを繰り返し、終始けがのリスクと隣り合わせのラグビー。かたや、5時間ほど同伴競技者と談笑しながら、けがのリスクも少なく体を動かし、ハーフターンでゆっくり食事を摂り、ラウンド後に広いお風呂で汗を流し帰宅するゴルフ。確かにリフレッシュするのに十二分異なる環境だ。
フィッティングで
そこまで変わるのか?
ミスの原因は“力み過ぎ”と
自己分析
「ベストスコアは103なんです。ドライバーはめちゃくちゃ右に曲がるし」
このフィッティングで自分に合ったクラブが見つかれば100切りは出来る、と言うフィッターに対して、
「そんなに変わりますか? そもそも力が入りすぎなんじゃないかと。分かってるんですけど、力抜けないんですよね。抜くっていう動作が一番難しい」
試しにいくつか方法をトライしてもらったが、確かに脱力は難しい様子。ならばここはフィッターの腕の見せどころ。フィッティングを開始した。
半信半疑のスタートから一転。
もしかして真っすぐ飛んでる!?
まずは基準になるクラブを2,3球ほど試打。球は右に飛び出したが、フィッターは大きな手ごたえを得る。測定器でのクラブ軌道、シャフトの歪みゲージによるしなり量。そこに大きな特徴が見られ、最適なクラブがすぐに見つかりそうだったからだ。
次のクラブを試打してもらった。快音が響き、五郎丸選手の表情も一変。
「なんか掴まった感じがしました」
その感覚通り、球はほぼ真っすぐの弾道で先ほどより20y以上飛んだ。ヘッドの開閉が強く、インパクト直前までタメを作るタイプには、こういったシャフトの組み合わせが合う。そう話すフィッターの言葉に熱心に耳を傾ける五郎丸選手。
「スイッチ入ったなあ。これからすぐ打ちに行きたい!」
もしかしたら、体がほぐれスイングでうまくアジャストしたのではないかと思い、別の組み合わせでも打ってもらった。今度は全く当たらない。スイングは変わらないように見えるが、真っすぐ飛ばないのだ。先ほどのクラブに戻せば、また良い当たりが続く。五郎丸選手の笑顔がこぼれる。
「これはスイッチ入ったなぁ」
クラブの合う合わないで球筋が大きく変わることへの驚きと、真っすぐ飛ぶ快感により、ゴルフ熱に火がついてしまったようだ。
「楽しい。これからすぐに練習場に行きたいぐらい(笑)」
ストイックなトップアスリート魂に火をつけた責任をとり、その場ですぐにツアーバスでドライバーを組み立てすることにした。
道具にとことんこだわる
キックティはいつも同じもの
フィッティングで決まったドライバーを組み立てる作業を熱心に見入る五郎丸選手。時おり作業内容を質問するなど、モノづくりには興味がある様子。身の回りの道具にこだわりがあるのか聞いてみた。
「キックティなんかは同じものじゃないと嫌ですね。嫌というか、それを変えてしまうと感覚も変わってしまう。その違いが、自分のキックにあるのではと、フォームをいじったり、余計なことをして調子を崩す可能性もある。だからなるべく変えないです。ゴルフもそうだと言ってましたね」
アマチュアの中には、真っすぐ飛ばない原因をスイングだと断定し、熱心にスイング改造をしてしまい、スランプに陥る人もいる。同じスイングでも、クラブの合う合わないで結果が180°変わるのだ。そんな話を直前にしたばかり。その話とリンクしたようだった。
「また来ます」。そう言って、出来上がったクラブを小脇に抱え帰る五郎丸選手の表情は、フィッター冥利に、メーカー冥利に尽きる、屈託のないものだった。
撮影こぼれ話し
– other story –
ヤマハゴルフに五郎丸選手が来社した某日。手にはゴルフショップの袋が下げられていた。「せっかく(フィッティングを受ける)なら、ちゃんとしようと思って」なんと来社直前にお店でゴルフシューズを購入して現れたのだった。ラグビー選手らしいと言っては語弊があるかもしれないが、なんとも思い切りがよく実直な性格を表すようなエピソードだった。
撮影:2020年6月