藤田寛之連載 トークマイドラマ 第2回

藤田寛之連載 トークマイドラマ 第2回

第2回. ゴルフが怖い16.05.16 UP

プロゴルファーになるという目的を果たした僕が、次に掲げたのは「大会に出る」という志である。ゴルフの世界は、プロになったからといってすぐ大会に出られるわけではない。シード権を持つごくわずかな人たちを除き、多くのプロは各地で開かれる予選会を勝ち進み、ようやく次の年の大会出場権を手にする。当時、5千人ほどのプロゴルファーがいたが、試合に出られるのは上位100人程度である。かなりの狭き門だったが、プロテスト合格後の高揚感の中で出場した予選会はファイナル17位に食い込み、僕は翌シーズンの大会出場権をあっさり手にすることができた。

物事がうまくいっている時、人は何となくこの幸運がずっと続くと信じてしまうものだが、僕の場合、挫折はすぐにやってきた。プロデビュー1年目の1993年シーズン。最初の大会こそ11位タイという好結果を残したが、その後はプロの世界の厚い壁に阻まれて、夏以降、全ての大会で予選落ちした。プロゴルファーは賞金稼ぎの職業だ。予選落ちだと賞金はゼロなので、試合に出れば出るほど手持ちの金が少なくなるという苦境に陥り、僕はだんだんと大会に出るのが怖くなってしまった。

小学校6年でゴルフと出会って以来、僕はずっとゴルフが好きだった。念願のプロになり、大会で自分の力を思い切り試せるはずだった。しかし、人に金を借りてまで出場した大会でも負け続けるうちに、いつしかゴルフは苦しいものとなり、第1打を打つティーグランドでは恐怖感すら覚えるようになった。「次の試合もどうせ予選落ちだろう」。こんな気持ちでは当然勝てるはずもなく、ツアーはおろか、1994年シーズンの出場権を懸けた予選会もファーストステージで早々に脱落してしまった。